刑事事件の相談と解決事例
弁護士に相談することにより、解決策が見つかることがあります。
以下では、埼玉総合法律事務所の弁護士がご相談を受けた事例を参考に、解決事例をご紹介します。
- 【相談】
Aさんは、お酒を飲んだ後、車を運転してしまい、追突事故を起こしてしまいました。酒気帯び運転で逮捕され、警察署に閉じ込められています。
当番弁護士として警察署に接見に行き、Aさんの話を聞いたところ、このまま長く閉じ込められていると、自営の製造業が立ちゆかなくなるとのことです。
なんとか早く出してください、との相談を受けました。
【解決】
刑事事件で逮捕された場合、多くは、逮捕から48時間以内に検察官に送致され、そこから24時間以内に検察官から勾留請求されるかどうかが決まります。
私がAさんと接見したのは、勾留される前でした。検察官に送致されるのは翌日だったのです。
勾留されると、基本的には、10日間閉じ込められることになります。その後、さらに10日間勾留される可能性もあります。
Aさんに勾留の説明をすると、10日間も閉じ込められれば、自営でやっている製造業の納品の締め切りに間に合わず、大きな取引先を失うことになり、生活が成り立たなくなるとのことでした。
この場合、身体拘束からの解放の手段としては、
①警察限りで釈放してもらう、
②検察官に勾留請求させない、
③裁判官に勾留請求を却下するよう求める、
という方法があります。
Aさんの場合は、翌日に検察官に送致されることが決まっており、①の手段は難しかったので、②と③の手段を検討しました。
具体的には、②では、担当検察官に対して「勾留請求するような事案ではないから勾留請求しないでくれ」との意見書を提出し、検察官と実際に話して、勾留の要件がないことを説得します。
検察官から勾留請求された場合は、③裁判官に対して、勾留の要件がないから勾留請求を却下するよう求める意見書を提出し、必要があれば裁判官との面談も行い、勾留請求を却下するよう説得します。
勾留ができる場合(勾留の要件)とは、犯罪の嫌疑が認められ、かつ、定まった住居がないか、証拠を隠すおそれがあるか、逃げ隠れするおそれがあって、かつ、身体拘束の必要性がある場合に限られます。
Aさんの場合は、定まった住居があって奥様と同居しており、酒気帯び運転について認めて反省しており、逮捕後の捜査にも素直に応じていたため、証拠を隠すおそれも逃げ隠れするおそれもありませんでした。
そして、Aさんの身体拘束を継続することは、Aさんの仕事の取引先を奪うことになりかねず、その損害は甚大であり、身体拘束の必要性もないといえます。
しかし、これを主張するだけでは検察官、裁判官を説得することはできません。
そこで、奥様に身元引受書に署名してもらい、自営の仕事のことやAさんのこれまでの生活状況などについて詳しく聴き取る必要があると考え、Aさんの接見後、すぐにAさんの奥様に電話連絡しました。
すでに深夜でしたが、奥様はAさんの解放について協力するとのことで、翌日の早朝8時に私の事務所に来てくれることになりました。
翌日、つまりAさんが勾留されるかどうかが決まる日の早朝、私はAさんの奥様から話しを聞き、身元引受書と、Aさんの仕事や生活状況について奥様が話したことをまとめた陳述書に署名をもらいました。
そして、担当の検察官に勾留請求をしないように、との意見書(奥様の身元引受書と陳述書も添付)をファクスしました。
検察官から勾留請求された場合に備えて、裁判官宛の意見書も作成し、裁判所に提出しました(勾留請求された場合は裁判官に渡してください、と裁判所にお願いすることができます。)。
検察官にファクスした後、検察官に電話をかけ、勾留の理由と必要性がないことを説明し、奥様が厳しく監視・監督することも説明しました。
検察官から、「検討します。」との言葉をもらい電話を切りました。
その日の昼過ぎ、検察官から「勾留請求しないことにしました。」との連絡を受けました。
Aさんは、この日、無事に釈放され、仕事に戻ることができました。
納品の期限に間に合わせることもでき、仕事に支障は生じなかったとの連絡を受けました。
その後、在宅捜査が進められ、Aさんは起訴されて裁判となりましたが、執行猶予判決を受け、その後も社会の中で生活しています。
刑事事件で身体拘束を受けている人の相談では、身体拘束という重大な人権侵害状態が続いているため、迅速な対応が求められます。
今回のAさんの場合は、奥様の協力もあり、迅速な対応が功を奏した事件でした。