自衛隊を憲法に書き込む本当の意味 (弁護士 伊須 慎一郎)

by staff | 2018年12月5日 12:00 AM

1 自衛隊を憲法に書き込むという憲法「改正」議論がなされています。災害救助活動等で頑張っている自衛隊が違憲であるというのは自衛隊員やその家族に失礼ではないか等と説明されています。では、自衛隊を憲法に書き込むだけで何も変わらないという安倍晋三氏の説明は信用できるのでしょうか?

2 政治家の嘘を見極めるためには、この間、政府や自民党が何をして、これから何をしようとしているのか、きちんと確認する必要があると思います。

(1)政府は、2014年7月1日、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行い、憲法9条の政府解釈(専守防衛)を空洞化させ、国会で集団的自衛権の行使等、憲法9条違反の安保法制を制定しました。これによって、日本から遠く離れた中東等で自衛隊が米軍に組み込まれて戦争を行うことが可能になりました。

(2)このように、政府が、憲法を無視して政府解釈(専守防衛)を空洞化させたことにより、必要最小限度の自衛の措置という縛りは、無きに等しいものとなりました。そのため、従前の政府解釈で否定されていた敵基地攻撃能力を備えた巡航ミサイルの保有や護衛艦いずもの空母化等の自衛隊の戦力強化を推し進めようとしています。

(3)さらには、政府・自民党等は、自衛隊員に失礼である等という理由で、軍隊(災害救助活動ではない)である自衛隊を憲法に明記し、その存在を公認する憲法「改正」をもくろんでいます。

3 しかし、軍隊である自衛隊が憲法に明記されると、私たちの暮らしは、様々な場面で人権を制限されることになります。憲法学者等の専門家が指摘している問題点をいくつか列挙してみます。

(1)戦力増強による際限のない軍事費増大のおそれがあります。現に自民党政務調査会では、NATOを参考に防衛費の対GDP比2パーセント(現在の5兆円規模から10兆円規模に拡大)の達成を掲げています。

(2)軍事費増大によって、年金や生活保護の切り下げ、教育費や医療費の高騰等、私たちの生活はますます苦しくなります。

(3)爆音を撒き散らしている航空自衛隊機の飛行差止め訴訟も、自衛隊を憲法で公認すれば、国防という理由で、ますます難しくなるでしょう。

(4)自衛官やその家族は、自衛隊が合憲になれば喜ぶのでしょうか。現在の自衛隊員の命令違反に対する刑罰は懲役7年が上限ですが、今後は危険な任務に対する命令に違反した場合、刑罰が死刑や無期懲役にまで厳罰化されるおそれもあります。現に2013年4月、当時の自民党の幹事長であった石破茂氏が厳罰化を示唆する発言をしています。

(5)その他にも、罰則付きの軍事的徴用制度の合憲化、国民の知る権利を侵害する政府にとって不都合な真実の隠ぺい(イラクや南スーダンの日報隠しが現に発生しています)、国防を理由とした強制的土地収用や新基地建設への抗議の抑圧、軍学共同体の促進による大学の自治や学問の自由への政治介入、憲法9条に抵触する自衛隊の活動に対する反対の意見表明や集会への妨害等、物も言えない息苦しい社会に変わってしまうことが危惧されます。

4 このように、集団的自衛権を公認する自衛隊の憲法明記は、日本の政治が軍隊優先の政治に抜本的に転換し、全ての基本的人権の支えとなっている平和的生存権を無効化することにつながります。その結果、自衛隊員を含めたすべての国民の人権を著しく侵害することになるおそれがあります。

このような理由で、私は軍隊である自衛隊を憲法に書き込むことを全面的に反対します。

弁護士 伊須 慎一郎

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日本国憲法が想定する民主主義とは(弁護士 牧野 丘)

by staff | 2018年12月4日 11:48 AM

安倍内閣は「実行実現内閣」なのだそうです。これまでの政権がなし得なかった政策を果敢に実行に移すということのようです。確かに過去の政権ができなかった諸政策を次から次へと実行に移しました。
たとえば・・・定義があいまいな「秘密」を刑罰をもって保護する「秘密保護法」。これまでの憲法解釈を変えて外国が行う戦争に日本も荷担することに道を開く「安保法」、犯罪の実行に着手しなくても内心で計画しただけで犯罪とされてしまう「共謀罪」、残業代を払わずに働かせる事に道を開く「高度プロフェッショナル制度」、そしてつい先日成立した「カジノ法」。
さらに2020年は新しい憲法施行の年にしたい、などと言っています。
ですが、忘れてならないのはこれらが国会で成立した時の世論調査では、いずれも「今国会での成立については賛成しない」という意見が多数派だったということです。

日本国憲法には不思議な条文があります。「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」(43条)。国会議員は選挙で思想信条を含めた政策のの違いをアピールし、その支持者の投票によって当選します。ですから国会議員が意見の異なる人も含めた「全国民」の代表だというのは少々ピンと来ません。
この意味をめぐっては法学の世界で深遠な議論があるのですが、要するに我が国の国会議員は投票してくれた人だけの事ではなく、自分とは意見が異なる他の人のことにも配慮した行動をすることが義務づけられている趣旨と理解されています。
少々情緒的な表現をすると、自分の意見と異なる人がいることを念頭に、たとえそれが少数派の意見であっても虚心坦懐に耳を傾けなければならない、ということです。
日本国憲法のもとでは、多数派が政権を担うことになっているので、その気になれば国会で論戦することなくどんどん議決をしてしまっても多数決ですから民主主義に反しないように見えます。しかし、それは日本国憲法が想定する民主主義ではないのです。

政権が「実行力」を誇るのであれば、国会議員による多数決の前に世論を変えてみせる説得力でなくてはなりません。そういう真の「実行力」は皆無に等しくありませんか?。
説得ができないのなら出直す謙虚さが、日本国憲法では求められています。

弁護士 牧野丘

 

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【最高裁上告不受理】暴利行為を認定し不動産売買の無効を認めた東京高裁2018年3月15日判決が確定

by staff | 2018年11月29日 12:20 AM

2018年3月に、下記ページに掲載いたしました東京高裁2018年3月15日判決(暴利行為を認定し、不動産買受人の明渡請求した判決)については、相手方が上告しておりましたが、
最高裁判所第三小法廷は、平成30年11月27日、上告不受理決定をし、東京高裁判決が維持され、勝訴判決が確定しました。

▶東京高裁2018年3月15日判決について[1]
(弁護士 谷川生子、月岡 朗、猪股 正)

Endnotes:
  1. 東京高裁2018年3月15日判決について: http://saitamasogo.jp/archives/71311

Source URL: http://saitamasogo.jp/archives/74503


12月9日「奨学金の保証人ホットライン」のお知らせ

by staff | 2018年11月28日 9:58 AM

 

独立行政法人日本学生支援機構の学資金貸与制度では、個人保証の場合、連帯保証人と保証人の2名が必要とされ、連帯保証人には全額の支払義務があるのに対し、保証人には、法律上、頭数で割った金額つまり2分の1の支払義務しかありません。

しかし、機構は、学資金の借主の保証人に対し、組織的に全額請求を続けていたことが、報道等により明らかになりました。
これを受けて、当会議では、下記の要領で「奨学金の保証人ホットライン」を実施します。

今回のホットラインでは、他に連帯保証人がいるのに、全額請求された、全額を支払う約束をさせられた、全額支払ってしまった、半分を超えて支払った分を返してほしいなど、保証人からの相談を中心に、弁護士・司法書士が相談に応じます。
また、ご自身が奨学金を借りている方、連帯保証人になっている方などからの相談にも対応します。

奨学金の返済等でお困りの方など、お一人で悩まずに、気軽にご相談下さい。
また、一人でも多くの方が相談できますよう、関係各位には、拡散にご協力をいただきますよう、お願い致します。

【奨学金の保証人ホットライン】
○ ホットライン電話番号 03-5800-5711
○ 日時 2018年12月9日(日)10:00~17:00
○ 主催 奨学金問題対策全国会議

*問い合わせ先 03(5802)7015(東京市民法律事務所内)
奨学金問題対策全国会議事務局長 弁護士 岩重佳治

ちらしはこちら⇒12月9日「奨学金の保証人ホットライン」

Source URL: http://saitamasogo.jp/archives/74462


SOGO MUSIC FESTA 1st(埼玉総合音楽祭)

by staff | 2018年11月27日 4:06 PM

11月19日午後6時半から、事務所の近所にある柏屋楽器フォーラムのホールをお借りして、所員による「音楽祭」(!)が開催されました。

出演者は、所員(およびそのお子さん)と事務所にゆかりの深い皆さん。事務所の大先輩の城口順二弁護士にも参加していただきました。
総勢20名、11演目20曲に及びました。ピアノ、トロンボーン、ギター、ハーモニカ、リコーダー、歌にダンス。私はアルトサックスで参加しました。

日頃の隠された腕前を・・・というには仕事の忙しさからか、少々練習不足は否めないところでしたが、小学生以来楽器に触ったこともない、という者もリコーダーアンサンブルで難曲に挑んだりしましたし、大いに盛り上がりました。最後は、当事務所の社歌とも言える「見上げてごらん夜の星を」を肩組んで大合唱!
音楽の力は、侮れません。というかものすごい。所員の団結と活力を引き出すには十分な役割を果たしたようです。。本当に楽しい2時間余でした。

次回はさらに質量共にグレードアップして開催したいと思います。

ちなみに余興ばかりに勤しんでいるわけではありません。私は、この10月1日から、日本司法支援センター埼玉地方事務所(略称法テラス埼玉)の所長に就任しました。

弁護士 牧野 丘

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労働者の選別は許されるか(弁護士 德永 美之理)

by staff | 2018年11月27日 3:36 PM

労働契約法18条の定める無期転換ルールが2018年以降本格的に始まりますが、それを前にして雇止めも多発しています。

無期転換ルールとは、通算5年を超えて有期労働契約が更新された場合に、労働者の申し込みにより次回以降の労働契約が無期契約に転換するというものです。このルールは、非正規労働者の雇用の安定化を目的とするものです。

ところが、①雇用期間が5年超になる前に契約を終了させてしまう、②雇用期間が5年超になる前に不更新とする合意書を締結させるなどの措置を講じて、無期転換ルールの適用を回避しようとする使用者も存在し、問題となっています。

こうした状況の下、住宅設備機器の製造販売等を目的とする大企業が、定められた期限内に昇級できなかった有期労働者を雇止めする制度を2014年度から開始しました。その結果、期限内に昇級できなかったことを理由に、同企業に8年以上勤務していた有期労働者が、2018年に労働契約法による無期転換権が発生するのを前にして2016年に雇い止めになりました。これに対し、私ども弁護団は、当該企業を相手に地位確認等を求めて提訴し、現在も係争中です。

争点は他にもありますが、労働契約法の定める要件(通算勤務期間が5年を超えること)に、昇級試験の合格という独自の要件を加重して、昇級試験に合格した有期労働者のみを無期転換させる「条件付」無期契約制度を利用して、無期化する労働者を使用者が事実上選別することを法が許容しているか、が重要な争点です。

労働者が安心して、生きがいをもって働くことができるように、法の趣旨を潜脱するようなやり方は許されるべきではありません。無期転換ルールは、潜脱を許さず、適正に運用されるべきです。

弁護士 德永 美之理

Source URL: http://saitamasogo.jp/archives/74146


奨学金の本を出版しました(弁護士 鴨田 譲) 

by staff | 2018年11月27日 3:29 PM

今年1月に埼玉奨学金問題ネットワークから「奨学金借りるとき返すときに読む本」(弘文堂)という書籍を出版しました。私はこれまで埼玉奨学金ネットの活動として、高校の先生方に奨学金問題の講演をさせて頂く機会が度々ありました。
講演の中では、奨学金利用者と延滞者が増加していること、日本学生支援機構の取り立てが厳しくなっていること、もっと国が予算をかけて大学への進学を支援すべきであることなどをお話しています。
すると、高校の先生からは、「私たちはいまの高校生のために何とかしてあげられないかと思っています。将来の問題も大切ですが、現時点でのベストな奨学金の選択は何でしょうか。」という意見が必ず寄せられます。

そこで、私たち埼玉奨学金ネットでは、「現時点でのベストな奨学金の選択」を提示するために、奨学金を「借りるとき」と「返すとき」の2つに分けて、それぞれの概要と注意点をまとめたガイドブック的な本を作ることにしました。そして、運よく、法律業界では著名な弘文堂が出版を引き受けて下さることになりました。

私は、本書後半の「返すとき」編の執筆を担当しました。日常的に裁判所に提出する書類は書いていますが、一般の読者向けにまとまった文章を書いたことはなかったので、編集者の方からはもっと分かりやすく書いて欲しいと度々ご指摘を受け、だいぶ苦戦しました。特に、弁護士が普段使いがちな「~の場合もある」、「~の可能性がある」という表現については、読者のためにもっとはっきり書いて欲しいというご指摘を頂きました。

そういった苦労もありながら、構想から1年半くらいの時間をかけてできた本ですので、これから奨学金の利用を考えている、あるいは、既に奨学金を借りている方にとって少しでもお役に立てれば幸いです。

弁護士 鴨田 譲

Source URL: http://saitamasogo.jp/archives/74143


フェルメール展

by staff | 2018年11月26日 4:15 PM

上野の森美術館で開催されている「フェルメール展」に行って参りました。

海の底のような深い青、フェルメールブルーで有名な画家。

フェルメールのものと確認された作品は世界でわずか三十数点。
今に至っても、贋作か否かとささやかれている作品もあります。

描かれる人や物に深い意味を込める寓意画で、その魅力は計り知れません。

そのようなアカデミックな話題はさておき、
今回の展覧会で一番すごいと感じたのは、その入場システムでした。

すべてが入場時間帯指定チケットとして売られているのです。

私は11時から12時半指定を購入しましたが、その間ならいつ入場してもよく、
しかも入替え制ではないため、ゆっくり鑑賞することができます。

入場前に10分程度待ちましたが、
数時間もの行列ができる昨今の人気展覧会と比較すると、天国のようでした。

館内は混んでいましたが、どの作品も間近で見ることができました。

作品のひとつが1月に入替えられるので、また見に行こうと思っています。

事務局 荻原

Source URL: http://saitamasogo.jp/archives/74391


9条俳句事件判決(弁護士 谷川 生子)

by staff | 2018年11月26日 2:25 PM

 

公民館だよりへの俳句掲載を拒否された女性が、さいたま市を相手に俳句の掲載と慰謝料の支払を求めて提訴した事件について、昨年の10月13日にさいたま地方裁判所の第一審判決、今年の5月18日に東京高等裁判所の控訴審判決が出ました。
いずれも、さいたま市の俳句掲載拒否は違法であるとして、原告の慰謝料請求を認めています。
それに対し、原告には掲載請求権がないとして、俳句の掲載請求は退けられました。

第一審判決は、公民館が3年8ヶ月の間継続して公民館だよりに俳句を掲載してきたことを重視し、原告の掲載への期待を法的保護に値する人格的利益であるとし、また、原告の思想や信条を理由に公民館職員が不公正な取り扱いをした行為は国家賠償法上違法であるとして、原告に5万円の慰謝料を認めました。この第一審判決を不服としたさいたま市は東京高等裁判所に控訴し、原告もまた俳句の掲載等を求めて控訴しました。

控訴審判決は、公民館は住民の教養の向上、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする公的な場である、として公民館の役割に言及し、公民館職員はこの役割を果たせるように、住民の社会教育活動の実現につき公正に取り扱うべき義務を負う、と明示しました。本件俳句の掲載により行政の公平性・公正性を害するとの被告の主張に対しては、意見の対立があることを理由に公民館が、意見を含む住民の学習成果をすべて掲載から排除することは、意見を含まない他の住民の学習成果の発表行為と比較して不公正な取り扱いとして許されないと断言しています。

いずれの判決も、「大人の」学習権を憲法上の権利として認めていますが、控訴審判決の方が公民館の性質等に踏み込んで判断している点で意義あるものと言えます。現在、上告及び上告受理申立がなされ、最高裁判所の決定が待たれるところです。

弁護士 谷川 生子

 

Source URL: http://saitamasogo.jp/archives/74141


北朝鮮情勢と憲法改正(弁護士 佐渡島 啓)

by staff | 2018年11月26日 2:18 PM

 

昨年は、米朝関係を発端とする戦争勃発が脳裏をよぎる一年でした。

しかし、昨年末にグテーレス国連事務総長が北朝鮮に対して、平昌五輪を米朝戦争回避に活用するように求めたとされる通り、北朝鮮が平昌五輪に選手・代表団を送り、これに対して米韓は五輪中の合同軍事演習を見送りました。そして、二度の南北首脳会談を経て、紆余曲折を経ながらも六月一二日に米朝首脳会談が実現しました。

この米朝首脳会談については、否定的な論調も目立ちますが、「戦争、核の脅威、長距離ミサイルの脅威から抜け出させた」(文在寅大統領)ことは間違いないでしょう。
四月二七日に南北首脳が署名した板門店宣言には、「核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」だけでなく、今年中の朝鮮戦争の終戦、休戦協定の平和協定への転換も盛り込まれています。この夏に予定されていた米韓軍事演習や海兵隊交流訓練も中止すると発表されました。

今回の米朝首脳会談は、英仏の譲歩がナチス・ドイツの勢力拡大に寄与したと評価されるミュンヘン会談が引き合いに出されることもあります。もちろん、すぐに朝鮮半島の雪解けという期待は甘いかもしれません。戦後の米中の国交回復も、米中共同声明から約七年後の一九七九年でした。
しかし、大きな流れが見えてはいないでしょうか。日本を取り巻く安全保障環境が厳しい…という北朝鮮脅威論を念頭に置いた日本政府頻出のフレーズも、今後は変化するかもしれません。

このように、おそらく朝鮮半島が歴史的な転換点にある状況で、これから改正議論が本格化するであろう私たちの憲法と、朝鮮戦争に端を発した戦後の安全保障体制は今後どうあるべきなのか、改めて真剣に考えていきたいと思います。

弁護士 佐渡島 啓

 

Source URL: http://saitamasogo.jp/archives/74139