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【判決速報】暴利行為を認定し、不動産買受人の明渡請求を排斥(東京高裁2018年3月15日判決)

埼玉県内の70歳の単身男性Aが、農協へのローンの返済に苦慮し、紹介された地元業者Bに農協への返済資金の貸付けを依頼したところ、その後、男性Aが所有していた自宅不動産等が、貸付けたBを介して、他の不動産業者Cに転売され(A→B→C)、業者Cが男性Aに対し、不動産の明渡を求めた事件について、東京高等裁判所第8民事部は、2018年3月15日、一審判決を取消し、男性Aと貸付けたBとの間の不動産売買契約は「暴利行為」に当たり無効であり、転売を受けた業者Cも所有権を取得しないとし、明渡請求を排斥する判決を言い渡しました。

第一審のさいたま地裁は、男性A本人が売買契約書等多数の書面に署名捺印しており、実印の使用や印鑑証明書の交付もあることなどを理由に、AB間の売買契約を有効とし、買受人Cの明渡請求を全部認容しましたが、東京高裁は、これを次の理由で、取り消しました。
「以上によれば、認知症の影響により控訴人Aの記憶力、コミュニケーション能力、集中力や注意力、論理的思考力と判断力等が相当程度低下しており、しかも、控訴人Aにとって生活の本拠であり収入源でもあった本件各不動産が競売等に付されるかもしれないなどの切迫した状況下において、このような状況を認識していたBが、その状況及び控訴人Aからの全幅の信頼を利用し、これを奇貨として、1億3000万円以上もの客観的交換価値を有する本件各不動産をその半分以下の6000万円で買い受ける旨の本件第1売買契約を締結したばかりか、その代金債務を完済する意思など有しておらず、Bが負担すべき費用等を本件売買代金に勝手に充当するなどして、実質的に約4000万円余りの出捐で本件各不動産の所有権を取得し、さらに、被控訴人Cに転売することによって約6000万円もの莫大な利益を得た一方、控訴人Aは、一連の取引により、生活の本拠であり収入源でもあった本件各不動産をすべて失い、手元に生活費等が全く残らなかったものである。これらを全体としてみたとき、本件第1売買契約は、Bが上記のような控訴人Aの状況等に乗じて莫大な利益を得ようとして行った、経済的取引としての合理性を著しく欠く取引であり、公序良俗に反する暴利行為に当たるといわざるを得ない。」(A、B、Cは、本記事用に挿入)

高裁判決が指摘するとおり、一連の取引により、Aは、自宅を含む全財産を喪失し生活に困窮する状況にまで追い込まれた一方、Bは莫大な利益を得ており、判決には現れていませんが背後には反社会的勢力の存在もうかがわれる事件です。正面から「暴利行為」を認定し、破壊されたAの生活の回復に道を開き、裁判によって正義を実現した判決であり、負けてはならない事件であるという確信をもってあきらめずに努力を続けられたことに、Aの代理人として、感謝し心が打ち震える思いです。

弁護士 谷川生子月岡 朗猪股 正

NHK受信契約訴訟の結末-最高裁判所判決・平成29年12月6日

2017(平成29)年12月6日、最高裁判所は、NHK受信契約訴訟で、視聴者に対し、事実上の受信料支払義務を認める判決を下しました。

NHK受信契約訴訟の結末(埼玉総合法律事務所)最高裁は、「放送法は、受信料の支払義務を、受信設備を設置することのみによって発生させたり、NHKから受信設備設置者への一方的な申込みによって発生させたりするのではな」い、と述べながら、「放送法64条1項は、受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり、NHKからの受信契約申込みに対し受信設備設置者が承諾をしない場合には、NHKがその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当である。」としたのです。

NHKの受信契約については、「契約の自由」は保障されないということです。

NHK受信契約訴訟の結末(埼玉総合法律事務所)最高裁は、「放送は、憲法21条が規定する表現の自由の保障の下で、国民の知る権利を実質的に充足し、健全な民主主義の発達に寄与するものとして、国民に広く普及されるべきものである。」とその重要性を認めた上で、「放送法が、NHKにつき、営利を目的として業務を行うこと及び他人の営業に関する広告の放送をすることを禁止し、事業運営の財源を受信設備設置者から支払われる受信料によって賄うこととしているのは、特定の個人、団体又は国家機関等から財政面での支配や影響がNHKに及ぶことのないようにし、受信設備を設置することによりNHKの放送を受信することのできる環境にある者に広く公平に負担を求めることによって、NHKが上記の者ら全体により支えられる事業体であるべきことを示すものにほかならない。」とNHKの公共放送としての特殊な性質を重視したといえます。

NHK受信契約訴訟の結末(埼玉総合法律事務所)他の国にも公共放送はありますが、その運営財源の確保は様々なようです。

例えば、イギリスは比較的日本の受信料制度に似ていますが、アメリカの公共放送は、寄付や起業協賛金、政府や自治体からの交付金で運営資金をまかなっています。
韓国では、受信料と広告料の2本柱で財源が確保され、受信料はなんと電気料金と合わせて徴収されます、また、公共放送ながら民法同様にCMが入るチャンネルがあります。

私たちが生活をしていく中で、契約の自由はとても大切なものですが、他方、知る権利も健全な民主主義のためには欠かすことができません。
NHKの受信契約については一定の結論が出ましたが、公共放送の運営財源やそのあり方については、今後も国民全体で考えていく必要がありそうです。

アスベスト被害賠償 国が個別連絡を開始-大阪泉南最高裁判決・平成26年10月9日

1 判決の内容

アスベスト被害賠償 国が個別連絡を開始-大阪泉南最高裁判決・平成26年10月9日 判決の内容(埼玉総合法律事務所)2014(平成26)年10月9日、最高裁判所は、大阪泉南地域のアスベスト被害について、国の責任を認める原告勝訴の判決を言い渡しました。

この事件は、大阪泉南地域のアスベスト(石綿)工場の元労働者の方やそのご家族などが、国に対し、アスベスト(石綿)粉じんを吸い込んだことによって健康被害を被ったのは、国がしっかりとアスベストを規制しなかったためであるとして、健康被害あるいは死亡による損害の賠償を求めた事案です。

この判決は、アスベスト被害について国の責任を認めた初めての最高裁判決です。
最高裁が、経済活動よりも労働者の健康が優先されることを確認し、国の責任を明確に認めた点で極めて大きな意義があります。

2 国の制度創設

アスベスト被害賠償 国が個別連絡を開始-大阪泉南最高裁判決・平成26年10月9日 国の制度創設(埼玉総合法律事務所)この最高裁判決を受けて、当時の厚生労働大臣は、被害者の方と面会し謝罪をした上で、大阪泉南地域以外のアスベスト被害者に対しても、判決の基準に照らして和解をしていくことを明言しました。

そして、国は、石綿製造工場に勤務し、石綿被害に遭った元労働者の方あるいはそのご遺族に対し、一定の条件を満たした場合に、賠償金を支払う救済制度を創設しました。

しかし、この制度に基づいて実際に賠償を請求することができたのは、全国でもいまだ少数にとどまっています。
僕が事務局長を務める埼玉アスベスト弁護団でも、20名弱の被害者の方についてしか請求ができていません。

この理由は、救済のハードルが高いからではなく、単純にこの制度の存在が一般に知られていないからです。

これまで、被害者やその遺族、支援団体、そして、埼玉アスベスト弁護団も、国に対し、各被害者に手紙を送って制度の存在を周知するように求めてきました。

3 平成29年10月の個別周知

アスベスト被害賠償 国が個別連絡を開始-大阪泉南最高裁判決・平成26年10月9日 平成29年10月の個別周知(埼玉総合法律事務所)そして、ようやく、国は、平成29年10月に、まず第1弾として、救済制度の対象者と思われる方に対して、個別に手紙を送付しました。
そして、国は、今後も、順次、対象と思われる方に対して、手紙を送付していくことになっています(なお、すべての対象者に連絡することは困難なことから、手紙が届かなくとも、制度の対象となる方はいらっしゃいます。)。

手紙が届いた場合はもちろん、手紙が届いていなくとも、「もしかしてアスベスト被害?」と思った場合には、ぜひご相談ください。アスベスト被害の賠償は、命、健康に対する賠償であり当然受けるべきものです。

埼玉アスベスト弁護団
埼玉アスベスト弁護団

「ネット検索されない権利」が認められるか-最高裁判所平成29年1月31日決定

自分の犯罪に関する情報がネット検索の結果として表示されることの削除を求めた事案

自分の犯罪に関する情報がネット検索の結果として表示されることの削除を求めた事案1Aさんは、児童買春をしたとの疑いで、逮捕され、罰金刑に処せられました。Aさんがこの容疑で逮捕された事実(「本件事実」)は逮捕当日に報道され、その内容がインターネット上のウェブサイトの掲示板に多数回書き込まれました。

この裁判で相手方となったBは、大手検索会社であるところ、Aさんの居住する県の名称及びAさんの氏名を条件として検索すると、検索結果一覧の中にAさんの本件事実が書き込まれたウェブサイトが表示されるようになっていました。

本件は、Aさんが、検索会社Bに対し、本件検索結果の削除を求めた事案です。

個人のプライバシー VS 検索事業者の表現の自由+ネット検索の社会的役割

この事案について、最高裁は次のとおり判示し、結論として、本件におけるAさんの主張を退け、B社が検索結果を削除する必要はないと判断しました。

個人のプライバシーに属する事実をみだりに公表されない利益は、法的保護の対象となると最高裁は認めています(最判昭和56年4月14日など)。

他方、検索事業者の検索結果の提供は、プログラムにより自動的に行われるものの、このプログラムは検索会社の方針に沿った結果を得ることができるように作成されたものですから、検索会社自身による表現行為という側面を有します。
また、検索結果の提供は、現代社会においてインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしています。

このような双方の利益を踏まえると、検索事業者が、ある者のプライバシーに属する事実を含む記事が掲載されたウェブサイトの情報を検索結果として提供する行為が違法となるか否かは、

  1. 事実の性質及び内容
  2. URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度
  3. その者の社会的地位や影響力
  4. 記事等の目的や意義
  5. 記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化
  6. 記事等において当該事実を記載する必要性

など、事実を公表されない法的利益とURL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので、その結果、事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができる、という判断基準を示しました。

本件の事情のもとでは削除は認められない

「児童買春をしたとの被疑事実に基づき逮捕されたという本件事実は、他人にみだりに知られたくないAさんのプライバシーに属する事実であるものではあるが、児童買春が児童に対する性的搾取及び性的虐待と位置付けられており、社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって禁止されていることに照らし、今なお公共の利害に関する事項であるといえる。
また、本件検索結果はAさんの居住する県の名称及びAさんの氏名を条件とした場合の検索結果の一部であることなどからすると、本件事実が伝達される範囲はある程度限られたものであるといえる。
…本件事実を公表されない法的利益が優越することが明らかであるとはいえない。」

最高裁は、以上のように判示し、検索結果の削除を求めたAさんの主張を退けました。

おわりに

インターネットの普及・発展とともに検索事業者に対して検索結果の削除を求める裁判は増加し、高等裁判所レベルでは、その判断枠組は3つに別れていましたが、この裁判は、最高裁として初めて統一的な判断枠組を示した判例として重要な意義があります。

本件では、①Aさんの知られたくない事実が性犯罪に関するもので、公共の利害に関する事項であったこと、②検索の方法も、Aさんの居住する県の名称及びAさんの氏名を条件とした場合でなければ検索結果として表示されず、本件事実が広められる範囲は限られていること、の2点から検索結果の削除が認められませんでした。
つまり、知られたくない事実が本件と異なるもので、検索方法もより単純なもの(例えば、Aさんの氏名のみの検索)で本件事実が検索結果として表示されてしまうなど事情が異なれば裁判の結果も異なってくる可能性があったのではないでしょうか。

今回の決定により、最高裁としての判断基準は示されましたので、今後は、この判例に従った事例の蓄積が待たれるところです。

相続税節税目的での養子縁組を無効ではないと判断した事案-最高裁判所第三小法廷平成29年1月31日判決

相続税節税目的での養子縁組を無効ではないと判断した事案

1判決の内容

最高裁判所は,「相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。
したがって,専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」と判断しました。

すなわち,最高裁判所は,「相続税を節税する動機」と親子関係を築くという「縁組をする意思」は併存するため,専ら相続税の節税を目的とする養子縁組であっても必ずしも無効とは言えないと判断したのです。

2 養子縁組が無効となる場合とは?

前提として,養子縁組が有効であるためには,養子縁組の届出をするだけでは足りず,「縁組をする意思がある」ことが必要であり,このような意思がない養子縁組は無効となります。

なお,この「縁組をする意思」は,養親になろうとする人と養子になろうとする人に,「養子縁組の届出をする意思」と「親子関係を築く意思」があれば認められます。

3 なぜ,今回の場合,養子縁組は無効とならなかったのか?

この裁判は,Aが自分の長男の子,すなわち,孫であるBを養子にしたところ,他のAの子がその養子縁組の無効を主張したという事件でした。

孫が養子となり,相続人の数が増えることなどによって相続税が減額されることがあります。
養子が養親の相続人となるのは,養子縁組の効果の一つですから,この相続人を増やすという目的は,Bとの間に親子関係を築く意思と両立するものです。

ですので,最高裁判所は,相続税の節税を目的とする縁組であっても直ちに無効とはならないと判断したと思われます。

4 節税目的の養子縁組が無効になることはないのか?

この判決が出たからといって相続税の節税目的の養子縁組が常に無効とならない,というわけではありません。

養親と養子の間に「親子関係を築く意思がなかった」と言えるような他の事情があれば養子縁組が無効となる可能性は十分あります。

この裁判では,そのような事情を認めることができなかったので,AとBの養子縁組が無効とならないと判断されたに過ぎません。

5 まとめ

養子縁組の効力を争いたい場合,大切なのは養親と養子に「親子関係を築く意思があったといえるかどうか」です。
では,どのような事情がある場合に,「親子関係を築く意思」の存在が否定され,養子縁組が無効となるのか。
それは事案によって様々ですので一度当事務所までご相談いただければと思います。

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預金も遺産分割の対象に-最高裁判所大法廷決定平成28年12月19日

判断のポイント

bengoshi02最高裁判所は、平成28年12月19日に、遺産分割における預貯金に関して、「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」と判断しました。

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これまでの遺産相続での預金の扱い方

これまで、預貯金に関しては、原則として、それぞれの相続人が、遺産分割協議などをしなくても、それぞれの相続分に応じて預金の権利を取得することとされていました。
そのため、相続人は、それぞれ、銀行に対して自分の相続分に相当する預貯金の払い戻しを請求する権利を持っていました。

(ただ、実際には、銀行は相続人全員の同意書等がある場合、または裁判所の判決がある場合でないと相続人の払い戻しに応じていませんでした。
それでも、相続人は他の相続人と相談しない、単独で、銀行に対して預金の払い戻しを求める裁判をして、銀行から自分の相続分に相当する遺産の預金を引き出すことができていたのです)。

これからの遺産相続での預金の扱い方

平成28年12月19日の最高裁判所の決定により、預貯金は遺産分割の対象になり、他の相続人との間での遺産を分ける話合い(遺産分割協議や遺産分割調停)等をして誰が預貯金の権利を取得するか決めないと、相続人は銀行などに対して預貯金の払い戻しを請求することができないこととなりました。

具体的なケースへの影響

平成28年12月19日の最高裁判所の決定によって、影響が出るのは、相続人の1人が、相続前に特別受益と言われる金銭の贈与等を受けていた場合です。

例えば、Aさんが亡くなり、XさんとYさんが相続人となった事案を例にします。

Aさんの遺産は土地が1000万円、預貯金が4000万円の場合に、Xさんが生前にAさんから5000万円の贈与を受けていた時です。

これまでは、このXさんがAさんから贈与された5000万円が特別受益にあたり、遺産分割で考慮して考えないといけない場合でも、Xさんは2000万円の預金を銀行に払い戻すことができたのです。
そうすると、遺産の預金の2000万をXさんは一人で銀行に請求できるので、Xさんは生前にもらった5000万円に預金の半分の2000万円を足した7000万円を取得できます。
これに対して、仮にYさんが預金のの折りの2000万円の他に、遺産の1000万円の土地を手に入れても、Yさんは2000万円に1000万円を足した3000万円の遺産しか手に入れられません。
この結論はXさんとYさんの間でやや不公平です。

これに対して、平成28年12月19日の最高裁判所の決定によれば、Xさんが生前にAさんから贈与を受けた5000万円を遺産分割において考慮することになります。
その結果、Xさんは遺産分割でAさんの預金も土地も取得できず、Xさんの取得するのは相続前にAさんから贈与を受けた5000万円だけとなります。
これに対して、YさんはAさんの預金4000万円全額とAさんの1000万円の土地を足した合計5000万円の遺産を取得することになります。

その結果、XさんとYさんはAさんから同じ金額を取得する公平な結論になります。
こういう違いが、平成28年12月19日の最高裁判所の決定により生じたのです。

【判決速報】貧困ビジネスの違法性を認め、総額約1580万円の損害賠償等を命じる(2017年3月1日 さいたま地裁)

生活に困窮した人を施設(無料低額宿泊所)に入所させ、生活保護を申請させて、入所者に劣悪なサービスしか提供せず、生活保護費の大半を搾取して不当な利益を得ていた貧困ビジネス業者に対し、本日、さいたま地方裁判所は、「生活保護法の趣旨に反し、その違法性は高い」「最低限度の生活を営む利益を侵害したものとして不法行為が成立する」として、総額約1580万円の損害賠償や支払った利用料の返還を命じる判決を言い渡しました(さいたま地方裁判所第2民事部判決)。

貧困ビジネスについて、生活保護法や社会福祉法の趣旨に反することを正面から認めたものであり、貧困ビジネスの蔓延に歯止めをかける画期的判決であると評価できます。
厳しい状況の中で、この裁判の原告として立ち上がり最後まで闘い抜かれた原告の方の勇気や誠実さに敬意を表します。埼玉のほか、東京、千葉、愛知、京都、大阪など各地で貧困問題に取り組む多くの弁護士の支援、協力により獲得された判決です。

判決の概要は次のとおりです。

1 不当利得返還請求
原告A及びBと被告との間の住居・生活サービス契約は、公序良俗に反し無効であるとし、被告に対し、施設利用料の返還を命じた。
以下、理由の一部を抜粋
「被告は、原告らから生活保護費を全額徴収しながら、原告らに対して、生活保護法に定める健康で文化的な最低限度の生活に満たないサービスしか提供せず、その差額をすべて取得していたのであり、かかる被告の行為は、生活保護法の趣旨に反し、その違法性は高いというべきである。」
「被告の本件事業は、生活保護費から利益を得ることを目的とし、路上生活者らを多数勧誘して被告寮に入居させ、生活保護を受給させた上でこれを全額徴収し、入居者らには生活保護基準に満たない劣悪なサービスを提供するのみで、その差額を収受して不当な利益を得ていたものであり、かかる事業の一環として原告らと被告との間で締結された本件契約は、単に対価とサービスの均衡を欠くばかりか、上記のとおり生活保護法の趣旨に反して、原告らを生活保護基準に満たない劣悪な環境に置くものであるほか、利用者の人権擁護の必要性から、第1種社会福祉事業についてその経営主体を原則として国、地方公共団体又は社会福祉法人とし、それ以外の者が経営する場合には都道府県知事等の許可にかからしめた社会福祉法の趣旨にも反し、原告らが生活に困窮していた状況に乗じて締結させたことなどその経緯や態様等に照らして、公序良俗に反し、無効というべきである。」

2 不法行為による慰謝料
生活状況、入居期間その他一切の事情を勘案し、被告に対し、慰謝料の支払いを命じた。
以下、理由の一部を抜粋
「上記のとおり、原告らは、被告により、その事業の一環として本件契約を締結させられ、上記認定のような生活保護基準を下回る劣悪な環境で生活することを余儀なくされていたものであり、被告については、原告らの最低限度の生活を営む利益を侵害したものとして不法行為が成立するというべきであり、原告らが主張する各人権は、実質的に同利益に含まれるものとして考慮することが相当である。」

3 安全配慮義務違反
仕事をさせられ、中指切断の障害を負った入所者につき、障害慰謝料、逸失利益、後遺症慰謝料等の賠償を命じた。
以下、理由の一部を抜粋
「被告は、…原告Bに対し、…切断機を用いて電線を切断したり、電線の外側のビニールを剥ぐなどの作業をするように指示していたのであるから、原告Bとの間で特別な社会的接触の関係に入ったものとして、信義則上、原告Bに対しその生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負うところ……、債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。」

(弁護士 猪股 正)

【交通事故】後遺障害の等級が10級から6級に

【交通事故】後遺障害の等級が10級から6級に、4級上がった事件(2012年)-担当医の協力を得て、異議申立て

bengoshi02後遺障害の等級が10級から6級に上がったケースについて、ご紹介します。

当初、依頼者の方は、「左手関節」の可動範囲が2分の1以下に制限されたとして、「10級10号」に該当すると判断されました。

しかし、この方の左手指の可動範囲も大幅に制限されていたので、おかしいという疑問を抱きました。障害系列表によると、部位、器質的障害・機能的障害の別に基づき、系列区分を35に分け、別系列に複数の後遺障害が認められた場合、併合等級として等級が1級以上、上がることになっています。

この方の件では、担当医の適切なアドバイスに基づき、異議の申し立てをしたところ、左手関節(上肢)だけでなく、左手指(手指)にも機能障害が認められたことにより、最終的に6級相当の後遺障害が認定され、保険金が5倍近くに増加しました。

車金融(ヤミ金融)に対し1億円の制裁判決(東京高裁)

bengoshi02車を担保に違法金利で貸付をし、車を取り上げられた男性が自殺した事件で、第一審のさいたま地裁では、車金融(ヤミ金融)及び結託していた中古車販売業者に対し、6840万円の損害賠償の支払を命じる判決が出ています。
関連記事:車金融(ヤミ金融)に対するさいたま地裁判決

これに対し、中古車販売業者が控訴していましたが、2012年(平成24年)11月22日、東京高等裁判所は、控訴を棄却して中古車販業者の責任を認めました。
東京高裁判決は、「本件貸付行為及び取立行為は、亡Aの自殺に対し、決定的な影響を及ぼしたことは、前記認定(原判決引用部分)のとおりであり、その違法性は顕著かつ重大であり、亡Aの抱えていた上記の悩みや思いが、自殺の背景にあったとしても、控訴人らの違法の程度と比較すると、損害の衡平な負担という趣旨の過失相殺の類推適用あるいは、自殺への寄与度を斟酌すべきほどの事情であると認めることはできない。」として、業者側の過失相殺の主張を排斥しました。
損害賠償額は、遅延損害金を含めると、1億円を超えます。

ヤミ金融被害対策埼玉弁護団の有志(埼玉総合法律事務所では、伊須慎一郎猪股正弁護士)が担当した事件です。

ヤミ金業者に6840万円の賠償命令、違法金利で男性自殺

2011年9月17日朝日新聞(埼玉)掲載<ヤミ金業者に賠償命令、年利346%「違法取り立て」で男性自殺 遺族らの訴えに地裁>

自動車が担保の車金融業者に貸付金の返済を迫られ、自殺した会社員男性(当時60)の遺族らが、首謀者の男らを相手取り、慰謝料などを求めた訴訟の判決がさいたま地裁であった。同地裁は「違法な取り立てが自殺に決定的な影響を及ぼした」として、強引な取り立てと自殺との因果関係を認定し、計約6840万円の支払いを命じた。

訴えを起こしていたのは、ヤミ金融「サイシングループ」(さいたま市)から高金利で金を借り、追いつめられて自殺した会社員男性の遺族3人と、客だった男性4人の計7人。

判決(7日付)によると、さいたま市に住んでいた会社員男性は2002年12月、車を担保に25万円を借りた。年利は出資法の上限金利(29・2%)を大幅に超える346%で、利息だけで毎月6万円を払い続けていた。03年春には返済に窮し、利息の支払期限だった5月21日、「手持ち無し。辛(つら)い」「もう会社へも出られない」と記した遺書を残して自殺した。
判決は、首謀者の男=出資法違反などの罪で実刑確定。その後死亡=について、男性の自殺直前まで、再三にわたって携帯電話や勤務先に取り立ての電話を繰り返した、と指摘。精神的に極度に追いつめ、自殺させたと断定した。

一方、被告側の「貸し付けや取り立ての際、脅迫的・強圧的な言辞は用いていない」という主張を認めたものの、男らは心理的な圧迫を続けており、「自殺を予見することは十分可能だった」と結論づけた。

同グループから年利252~514%の高金利で借りていた男性4人について、判決は「暴利を得る目的で貸し付け行為を行った」と認定し、それぞれ慰謝料など128万円~626万円の支払いを命じた。
判決を受け、原告側の代理人弁護士は「高金利の貸し付けは、それだけで人を精神的に追い込む凶器。脅迫的・強圧的な言葉遣いがない場合でも、業者側の責任を認定したという点で、実態を正しく捉えた判決だ」と評価した。

妻「家族に心配かけまいと」
「ヤミ金グループの責任を認めた判決には、本当に感謝しています。でも、主人を失った喪失感は深まるばかりなんです」。
自殺した会社員男性の妻(70)は、自宅に飾った遺影の前で心境を語った。

男性は2003年5月21日、さいたま市内のビルから飛び降り自殺した。その後、妻は男性がヤミ金グループから2回にわたり借金していたことを知った。借金の担保にしていたのは、「人生最初で最後の新車」と大切にしていた愛車のクラウンだった。
男性は01年ごろから給料が減り、生活が苦しくなっていた。妻は体調を崩し、入退院を繰り返していた。「家族思いの人でしたから、心配をかけまいと1人で責任をとろうとしたんだと思います」

2人は中学校の同級生。ともに生徒会副会長を務め、卒業後は別々の道を歩んだが、大学時代に再会し、20代半ばで結婚した。仲むつまじい夫婦として、周囲にうらやましがれた。訴えを起こそうと提案したのは長男(41)と長女(36)だった。自分たちのように苦しむ被害者が1人でも減って欲しいという思いがあったからだという。

05年4月の提訴から判決まで6年半。「いっぱい支えられていたんだなって改めて感じます。まじめに家族を守ろうとした生き様が認められたよと、報告したいです」。

asahi.comにも掲載されています。

ヤミ金融被害対策埼玉弁護団の有志(当事務所では、伊須慎一郎猪股正弁護士)が担当した事件です。

控訴審はこちら

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