反貧困全国集会2019集会宣言 「派遣村から10年~垣根を越えてつながろう!」

 2月16日、東京四谷で、反貧困全国集会2019が開催されました。
 「私たちは、微力かもしれないが無力ではない、一緒につながれば、それは大きな力となる。」。集会の締めくくりの宇都宮健児弁護士の言葉です。
集会の最後に採択された集会宣言です。

反貧困全国集会2019集会宣言
「派遣村から10年~垣根を越えてつながろう!」

 年越し派遣村から10年になります。日比谷公園には、仕事と住まいを失い、生存の危機にある人が次々とたどり着き、2009年の年明けには、その数は500人を超えました。
 当時、非正規雇用は、過去最高の約35%まで増加していました。1995年に、日経連(現在の経団連)が「新時代の日本的経営」という雇用改革案を明らかにして以降、企業は、人件費の節約や雇用調整を容易に行うため、正規雇用を減らし非正規雇用への置き換えを進めたからです。そして、リーマンショックがあった2008年、派遣労働者など、非正規雇用を中心に一斉に切り捨てられ、生活に困窮する人が全国にあふれることになりました。「競争に負けて困窮し、ホームレスに転落して餓死するのも自己責任」という空気が社会を覆いつくす中で、年越し派遣村の取組は、日比谷公園の現場から、メディアを通じ、生存の危機にある人々の現実の姿を社会に伝え、貧困を可視化し、個人の努力や能力の問題ではなく、制度や社会を変える必要があることを多くの人に伝え、取組後の2009年9月、政権が交代することになりました。

 あれから10年。非正規雇用は40%近くとなり、世帯収入も貯蓄もさらに減少し、中間層の痛みが増す中で、一度は小さくなった「自己責任」の声は、あのときよりさらに大きくなっています。それどころか、子どもを作らないLGBTのカップルには「生産性がない」とした自民党議員の発言のように、「生産性」という言葉が人間に対して当たり前に使われ、ネット上には「金がないのに子作りするな。」「生活力のない人間が増え、真面目に働いた者が払っている税金が足りなくなる。」といった言葉が流れ、「財源不足なのだから命の選別が必要」というような言説が増えています。

 しかし、人間は、一人ひとり個性を持ち、人間であるということだけでかけがえのない価値があります。人間の生存は、「生産性」の有無や「自己責任」を果たしているかなどの条件付きのものではなく、無条件に肯定されるものです。この当たり前のことが否定された過去の歴史を踏まえ、憲法は「個人の尊厳」に最高の価値を置くと宣言しているのです(憲法13条)。

 派遣村の取組には、労働や生活保護問題など運動の垣根を越えて多くの人が参加し、現場から貧困を可視化し、市民が理念や価値を共有して連帯すれば、社会を変えうるということを示し、勇気と希望を共有できた取組だったと思います。個人の尊厳を踏みにじり、「自己責任」を喧伝して人を追い込み、企業の利益を優先し人間を使い潰す政策や政治への怒りや、その思いを共有した人と人とのつながりは、新しいつながりを作りながら粘り強く今へと続いています。生きづらさを抱えた者同士を分断させる「自己責任」の罠に陥らず、垣根を越えてつながろう。

2019年2月16日
反貧困全国集会2019参加者一同

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