貧困研究会【緊急声明】生活保護基準額の引下げは断じて認められません

12月8日に厚労省が示した「生活扶助基準1割引き下げ、母子加算も減額」案に対して、貧困研究会が、12月10日、緊急声明「生活保護基準額の引下げは断じて認められません」を公表しました。

【緊急声明】

生活保護基準額の引下げは断じて認められません

2017年12月10日

貧困研究会第10回大会参加者一同

12月8日、社会保障審議会生活保護基準部会に、生活扶助基準の検証結果案と有子世帯に対する扶助・加算に関する検証結果案が提出されました。報道によると、厚労省はこれにもとづき、生活扶助基準額を最大1割引き下げ、加算も引き下げる方針だとのことです。大都市部では、中学生と小学生の子ども2人を持つ40代夫婦は支給額(各種加算を含む)が月約21万9千円から約19万4千円に11%減り、65歳の高齢単身者も月約8万円から約7万3千円と8%のマイナスとなります。また、母子加算は子ども1人の場合、現在の平均月2万1千円から1万7千円に下がります。子ども、特に中学生がいる世帯での引き下げが大きくなっています。

この生活保護基準額の引下げは、本大会において明らかになったひとり親世帯の生活困難や生活保護世帯の子どもたちの厳しい現実を顧みないものです。本大会では、「ひとり親世帯では3割以上が生活困難」、「家賃や公共料金の滞納もふたり親の2倍以上」などひとり親世帯の厳しい生活が明らかとなりました。また「母子世帯の母親の抑うつ傾向はふたり親の母親の2倍」など、深刻な健康状態も報告されました。さらに、生活保護世帯の子どもたちが、離婚や借金などの家庭生活の困難によって、勉強の機会が十分に保障されず、クラブ活動などが制約されている現状も明らかにされました。

今回の生活保護基準額の引下げは、国を挙げての課題となっている子どもの貧困対策に逆行するのは明らかです。のみならず、2013年からの最大10%の引下げに続き、さらに最大1割の引下げや母子加算の減額が行われれば、際限なく生活保護基準額が低下していくことは必至であり、健康で文化的な生活はおろか、生存さえも保障されないという深刻な事態を招きかねません。また生活保護基準額の引下げによって、最後のセーフティネットである生活保護がますます利用しづらくなることは確実です。

また、本大会では、今回の加算の見直しは金額の問題だけでなく、制度上の大転換であることの重大性が指摘されました。例えば、児童養育加算は児童手当との連動を断ち切ることになります。金額の推計だけから制度の基本を安易に転換するのは容認できません。

以上の理由により、私たち貧困研究会第10回大会参加者一同は、生活保護基準額の引下げは断じて許されないことを内外に表明するものです。

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