暉峻淑子さん著「対話する社会へ」(岩波新書)

暉峻さんは、以前から、格差社会は政府の政策によって作られたものだと指摘されてきました。「対話する社会へ」では、共有する社会システム(社会保障制度や社会資本など)について、税や保険料の拠出者である私たち市民が互いに話し合う「討議デモクラシー」の重要性を指摘し、「対話」が苦悩に満ちた社会に希望を呼び寄せる道であるとされています。

5月28日の集会(http://tax-justice.com/?p=636)でご講演いただく井手英策さんも、「人間が他者と利害や価値を共有して何かをおこなうためには、ひとつの前提が不可欠である。それは、他者から承認されているという実感、自分が周囲と等しい扱いを受けているという確信である。…この承認欲求を理念によって満たすには二つの方法がある。ひとつは、愛国心や倫理・道徳に訴える、「一君万民」的な理念を共有することである。いまひとつは、地域という共同体のなかで、「生存と生活の基礎的ニーズ」を社会の構成員それぞれが主体的に発見し、負担という痛みを分かち合いながら、構成な分配の理念を共有することである。」(「分断社会を終わらせる」(筑摩選書・237頁))と述べられています。

地域からの「対話」が、一君万民的な理念や愛国心の陥穽に陥らないために重要であり、社会の分断・対立や格差社会を超えて、人間のための財政を構築し、公正な社会を実現することにつながるのではないでしょうか。

弁護士 猪 股  正

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