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浅田次郎さんの「無言歌」

浅田次郎さんの「無言歌」

 
 

作家の浅田次郎さんの「帰郷」の中に「無言歌」という作品があります。
何度も読み返しています。

 

潜水艦の中で、2人の兵士が、夢の中の出来事を互いに語り合います。
西大西洋の艦の中で、酸素がどんどん減っていき、死が刻々と近づいてきます。
彼らは、最後にチャップリンのスマイルを鼻歌で歌います。
「スマイル、ララリー、ラリーラーー」

 

そして、最後の最後にこう結びます。
「俺は、ひとつだけ誇りに思う」
「しゃらくさいこといいなさんなよ」
「いや、この死にざまだよ。戦死だろうが、殉職だろうがかまうものか。俺は人を傷つけず、人に傷つけられずに人生をおえることを、心から誇りに思う」
「同感だ、沢渡。こんな人生は、そうそうあるもんじゃない」
「スマイル。唄おう」
「言葉は、ないほうがいい」

 

陸上自衛隊の隊員は、PKO派遣5原則が破れた内戦状態の南スーダンに派遣されています。防衛省は、南スーダンの業務日報が、私たち国民の目に触れると不味いと考え、当初、業務日報を隠ぺいしようしました。しかし、情報隠ぺいだと大きな批判が起こり、一転して、電子データが残っていたとして、業務日報を一部開示しています。しかし、大事な南スーダンの情勢や弾薬の使用状況については黒塗りのまま、私たちの目から未だに隠しています。兵士であっても、自衛隊員であっても、同じようにかけがえのない命を大切にされなければなりません。政府は、自衛隊員、そして、私たち国民が、後戻りできない、「殺し、殺される関係」に陥る前に、南スーダンから一刻も早く陸上自衛隊を撤退させなければなりません。

 
 

潜水艦の中ではなく、大空の下で、誰もが楽しく歌うことができる、
そんな簡単なようで、非常に難しいことを、どのようにしたら実現できるのか。
浅田さんの作品を繰り返し読みながら、繰り返し考えています。

 
 

弁護士 伊須 慎一郎

 
 

 
 

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