仁川地方弁護士会(弁護士 佐渡島 啓)

弁護士 佐渡島 啓

昨年10月、埼玉弁護士会のメンバー約20名で、会と姉妹提携をしている韓国・仁川地方弁護士会を訪問した。
2泊3日のスケジュールでは、片言の英語と焼酎入りビールの一気飲みで盛大に盛り上がった宴会だけでなく、両国でトピックな法律問題をそれぞれ報告するセミナーもおこなった。

仁川弁護士会からは、今年から韓国で始まった法曹一元の説明を受けた。
これまでは韓国も日本同様に、司法試験合格者は一定期間の研修後に裁判官・検察官・弁護士とそれぞれの道に進んでいたが、これを当初は3年以上、2022年以降は10年以上弁護士等の経験を有することを裁判官の任用条件としたのである。

法曹一元は英米法系の国では古くから採用されている制度であるが、今回韓国で導入された大きな理由には、韓国国民による司法不信があった。
例えば、出世コースをはずれた裁判官が定年よりもはるか前に退官して弁護士に転身するケースが多く、経験豊富な裁判官による裁判を受けられないという事態が生じたり、あるいは、途中退官した元先輩裁判官の弁護士に担当裁判官が事件処理で配慮する慣行があると言われていた。

日本でも10年ほど前には法曹一元が司法改革の一つとして議論されていたが、裁判所等の抵抗が強く、現時点では実現する見通しはない。
しかし、司法に対する国民の不信という不幸がきっかけであったとはいえ、法曹一元という劇的な制度改革を実現した隣国のダイナミックな動きに多少の興奮をおぼえると共に、果たして日本の司法は国民に信頼されているのか、様々なことが頭に浮かびながらの帰国であった。

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