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日本の貧困―奨学金が進学を阻む(弁護士 鴨田 譲)

日本の貧困―奨学金が進学を阻む(弁護士 鴨田 譲)

弁護士 鴨田 譲

ブラックリストに登録

学生時代に借りた奨学金の返済で苦しむ方が増えています。
その理由は、そもそも大学の入学金、授業料が高騰していること(特に国立大学の学費の値上がりが顕著で、2010年度の国立大学の入学料+年間授業料は約82万円になっています。)と、大学を卒業しても昨今の就職難により就職出来ないこと、就職できたとしても非正規労働者などにより低賃金であることが挙げられます。

さらに、この事態に拍車をかけているのは、奨学金の貸し手である日本学生支援機構が奨学金の回収を強化しているという事情もあります。
支援機構は、借り手が延滞を始めると、延滞3ヶ月でブラックリストに登録し、延滞4ヶ月で債権回収をサービサーに業務委託、延滞9ヶ月になるとほぼ自動的に裁判所に支払督促の申立を行うという強硬な方針をとっているようです。

世間では、「本当は返せるのに、返さないだけではないか?」との疑いの声も聞かれますが、延滞すれば年率10%の遅延損害金が発生し、ブラックリストにまで登録されるという奨学金制度のもとでは、返済しない場合のデメリットが非常に大きいため、あえて返済しない人が存在するとは考えられず、奨学金を返済していない人は返済できない人であるといえます。

また、「奨学金を返せないくらいなら、大学に行かずに働けばよい。」といった意見も聞きます。

しかし、新規高卒者に対する求人は、1992年には約168万件あったものが、2010年には約20万件と大幅に減少しており、現実的には高卒での就職が非常に厳しいものになっています。
ですから、大学進学の機会を奪われることは、就職の機会を奪うことにまでなってくるのです。
 

救済制度の充実を

奨学金は、本来、経済的に余裕のない家庭の子どもに対して、大学などへの進学を援助するために設けられている制度ですが、現在のこのような状況下で、「奨学金を返せないかもしれないので大学進学を諦める。」という方も現れ、奨学金の目的からして本末転倒な結果をもたらしつつあります。

家庭の経済力によって、子どもの進路選択が決定してしまうという不平等な状況になるのを避けるため、給付型奨学金の導入、奨学金返済困難者のための救済制度の充実を目指していきたいと思っています。

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