事務所と私(弁護士 谷川 生子)

弁護士 谷川 生子

入所して早くも5年が経ちました。弁護士1年目は、刑事事件でヘトヘトになった記憶があります。数の多さもさることながら、責任能力や故意を争う事件など、内容的に濃いものが集中していました。気難しい被疑者と接見室で怒鳴り合ったり、対応に苦労する事件に遭うたびに、先輩弁護士に助けてもらいながら何とか終えてきました。そのほか、失業して次の仕事が見つからず、所持金が底を尽いたあげくにオニギリを盗った人の事件。この人が、二度と同じことを繰り返さないためにはどうしたらよいのでしょうか。事務所には貧困問題、労働問題に先進的に取り組んでいる弁護士が多くいました。埼玉総合に入らなければ、定期的に開かれる生活困窮者向けの相談会やホットラインに参加することはなかったかもしれません。当事者の生の声を聞くなかで、自分も相手も同じ人間だということを実感しました。このことは、私が事務所の活動から得られた最も大きな財産かもしれません。

今、世の中は、最後のセイフティネットである生活保護基準切り下げの方向にどんどん進んでいます。先頭で旗を振っている人々が、八方塞がりで困っている人々の声を直接聞いたら、少しは変わってくれるでしょうか?
私にはまだ事務所の歴史は語れません。それでも、埼玉総合が、それぞれの時代で果たすべき役割の一端を担えたら、と思います。

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