新たな司法制度を支えるために(弁護士 宮澤 洋夫)

弁護士 宮澤 洋夫

 旧暦一日から事件の被害者・遺族が刑事裁判で直接被告人に質問したり、検察官の求刑に意見を述べたりできる被害者参加制度が発足した。

 今年五月二一日からは国民が司法に参加する裁判員制度が発足する。この制度に被害者・遺族が加わるケースも多くなることが予測される。

 官僚裁判官による〝誤判〟をなくすため、国民が裁判に参加する〝陪審〟の復活が要請されたが、我が国の実状に合うものとして〝参審〟の裁判員制度が採用されたものである。

 被害者・遺族の訴えが反映され、米国の陪審映画「十二人の怒れる男」のような審理が行われ、司法の民主化と公正な裁判に資せられることを期待している。

 司法を支える裁判官、検察官、弁護士は法曹三者と称されている。これらは司法修習を経て選択されているが、日弁連は従来、弁護士として社会経験を経てから裁判官、検察官となる法曹一元の制度を提唱して来た。

 ところが、法曹の飛躍的増員の要請に応える方策として、毎年三〇〇〇人の要請を目途に〝法科大学院〟を設立し、これを修了して司法試験に合格後、短縮された司法修習を経て、それぞれに進むこととした。法科大学院を基点としたため、法曹一元制度は採用されなかった。

 ところが今年度法科大学院修了者の司法試験の受験者六二六一人、合格者二〇六五人、合格率三三%、受験制限(修了後五年以内に三回)により、一七二人が受験資格を喪失している。司法改革の第一歩は失敗した状況である。

 新たな社会の要請に応える司法の健全方策の早急な検討が要請されている。

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