ヤミ金業者に6840万円の賠償命令、違法金利で男性自殺

2011年9月17日朝日新聞(埼玉)掲載<ヤミ金業者に賠償命令、年利346%「違法取り立て」で男性自殺 遺族らの訴えに地裁>

自動車が担保の車金融業者に貸付金の返済を迫られ、自殺した会社員男性(当時60)の遺族らが、首謀者の男らを相手取り、慰謝料などを求めた訴訟の判決がさいたま地裁であった。同地裁は「違法な取り立てが自殺に決定的な影響を及ぼした」として、強引な取り立てと自殺との因果関係を認定し、計約6840万円の支払いを命じた。

訴えを起こしていたのは、ヤミ金融「サイシングループ」(さいたま市)から高金利で金を借り、追いつめられて自殺した会社員男性の遺族3人と、客だった男性4人の計7人。

判決(7日付)によると、さいたま市に住んでいた会社員男性は2002年12月、車を担保に25万円を借りた。年利は出資法の上限金利(29・2%)を大幅に超える346%で、利息だけで毎月6万円を払い続けていた。03年春には返済に窮し、利息の支払期限だった5月21日、「手持ち無し。辛(つら)い」「もう会社へも出られない」と記した遺書を残して自殺した。
判決は、首謀者の男=出資法違反などの罪で実刑確定。その後死亡=について、男性の自殺直前まで、再三にわたって携帯電話や勤務先に取り立ての電話を繰り返した、と指摘。精神的に極度に追いつめ、自殺させたと断定した。

一方、被告側の「貸し付けや取り立ての際、脅迫的・強圧的な言辞は用いていない」という主張を認めたものの、男らは心理的な圧迫を続けており、「自殺を予見することは十分可能だった」と結論づけた。

同グループから年利252~514%の高金利で借りていた男性4人について、判決は「暴利を得る目的で貸し付け行為を行った」と認定し、それぞれ慰謝料など128万円~626万円の支払いを命じた。
判決を受け、原告側の代理人弁護士は「高金利の貸し付けは、それだけで人を精神的に追い込む凶器。脅迫的・強圧的な言葉遣いがない場合でも、業者側の責任を認定したという点で、実態を正しく捉えた判決だ」と評価した。

妻「家族に心配かけまいと」
「ヤミ金グループの責任を認めた判決には、本当に感謝しています。でも、主人を失った喪失感は深まるばかりなんです」。
自殺した会社員男性の妻(70)は、自宅に飾った遺影の前で心境を語った。

男性は2003年5月21日、さいたま市内のビルから飛び降り自殺した。その後、妻は男性がヤミ金グループから2回にわたり借金していたことを知った。借金の担保にしていたのは、「人生最初で最後の新車」と大切にしていた愛車のクラウンだった。
男性は01年ごろから給料が減り、生活が苦しくなっていた。妻は体調を崩し、入退院を繰り返していた。「家族思いの人でしたから、心配をかけまいと1人で責任をとろうとしたんだと思います」

2人は中学校の同級生。ともに生徒会副会長を務め、卒業後は別々の道を歩んだが、大学時代に再会し、20代半ばで結婚した。仲むつまじい夫婦として、周囲にうらやましがれた。訴えを起こそうと提案したのは長男(41)と長女(36)だった。自分たちのように苦しむ被害者が1人でも減って欲しいという思いがあったからだという。

05年4月の提訴から判決まで6年半。「いっぱい支えられていたんだなって改めて感じます。まじめに家族を守ろうとした生き様が認められたよと、報告したいです」。

asahi.comにも掲載されています。

ヤミ金融被害対策埼玉弁護団の有志(当事務所では、伊須慎一郎猪股正弁護士)が担当した事件です。

控訴審はこちら

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